早わかり細胞研究

細胞株の樹立
(1943年~)

L929
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アメリカのゲイ(George Gey)とアール(Wilton Earle)は、鶏胚エキスと馬血清を用いてマウスの線維芽細胞を安定して培養する系を立ち上げました。その中で彼らは、培養条件を揃えても生き残る細胞と死ぬ細胞が出るのは何故か?という疑問を解消するため、1つ1つの細胞を単離して培養するという実験を行っていました。1943年、アールの部下であったサンフォード(Katherine Sanford)とライクリー(Gwendolyn Likely)が行った実験中に偶然生まれたL929は、世界で初めてのマウス不死化細胞、いわゆる「細胞株」でした。

本来、生体から取った正常な体細胞(生殖細胞以外の細胞)は、細胞分裂寿命というものが存在し、一定の回数の細胞分裂を行うと分裂能を失ってしまうことが知られています。もちろん分裂しない細胞がすぐ死ぬというわけではありませんが、当時の技術では、分裂を「終えた」細胞を数週間以上維持することは不可能であり、つまり「永続的に培養できる細胞」というものが存在しませんでした。無限の増殖能を持つ細胞としては、大きく分けて幹細胞とガン細胞の2種類が存在します。1943年に行われた実験は、細胞を単離して培養することで、マウス線維芽細胞のうち、偶然培養中にガン化したものを取ってきたということになります。つまり、このガン化マウス線維芽細胞「L929」こそが、人類が最初に手にした永続的に培養できる細胞、すなわち「細胞株」なのです。

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