早わかり細胞研究

ガン細胞(細胞株)と幹細胞

無限の増殖能力を持つ細胞として、大きく分けてガン細胞と幹細胞の2種類があるということは[細胞株の樹立]で既に述べました。では、その2つの違いとはなんでしょうか?

がん細胞
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ガン細胞とは、動物の細胞になんらかの遺伝子変異(そのほとんどが癌遺伝子もしくは癌抑制遺伝子における変異)が発生し、予期せず無限の増殖能力を得てしまった細胞を意味します。通常、細胞株(Cell Line)という言葉は、このようにガン化によって無限の増殖性を持った細胞を指します。

ガン細胞はその元となった細胞の性質をある程度引き継いでいるため、例えばヒトの細胞株といっても、様々な種類が存在し、性質は大きく異なります。

世界初のヒト細胞株であるHeLa細胞は、子宮頸部の上皮細胞がガン化したものであり、接着性で上皮細胞系の性質を有します。また、モノクローナル抗体の作製に用いられるミエローマは、骨髄のリンパ球細胞がガン化したものであり、浮遊性でリンパ球系の性質を有します。

対して、幹細胞とは、「正常な状態」を維持したまま無限の増殖能力を持つ細胞を意味します。「正常な状態」とは、ガンを引き起こすような遺伝子変異がDNAに入っておらず、また、適切なシグナルを受けることで「無限の増殖を停止することができる」、つまり生体の制御下にある状態のことを指します。 幹細胞は動物の発生期初期だけではなく、どの成長過程においても存在します。大まかに分類すると、胚性幹細胞、体性(組織)幹細胞、生殖幹細胞などがあります。

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