早わかり細胞研究

Embryonic carcinoma (EC細胞)の研究と樹立
(1964年~)

悪性奇形腫(Teratocarcinoma)という病気があります。この病気は生殖腺で主に発生します。体を構成するすべての細胞の元となる生殖細胞がガン化することが原因で、三胚葉全ての細胞を持った腫瘍(奇形腫)を形成します。そのうち未分化細胞の割合が高いものを悪性奇形腫と呼びます。

1964年、アメリカのクラインスミス(Lewis J. Kleinsmith)とピアース(G. Barry Pierce)はマウスの1~7.5日胚を子宮から摘出し、子宮以外に移植することで、マウスにおいてTeratocarcinomaを誘導しました。誘導したTeratocarcinomaの一部を採取して培養してみると、無限の増殖性を持ち、細胞株として樹立することができました。彼らはマウス胚に由来するこの細胞株を、胚性がん腫細胞 Embryonic Carcinoma cell (EC cell)と名付けました。彼らは、このEC細胞は胚性幹細胞が腫瘍化したものであると考えたのです。

その後の1974年、アメリカのブリンスター(R. L. Brinster)は、EC細胞をマウスの胚盤胞に注入することで、生まれたマウスの体細胞に、注入したEC細胞由来のものが含まれている、つまりキメラマウスが作製できることを示しました。

1977年にはイギリスのホーガン(B. Hogan)によってヒトのEC細胞が悪性奇形腫から樹立されましたが、細胞の表面抗原、および適切な培養条件がマウスEC細胞と異なることが示唆されました。

マウスEC細胞は、初めて樹立された幹細胞でしたが、樹立過程で既にガン化しており、上述の定義では、「ガン細胞」と「幹細胞」の合いの子のような存在といえます。

このページのTOP