- 再生医療の基礎知識
- 疾患特異的iPS細胞
再生医療の基礎知識
疾患特異的iPS細胞
患者さんの皮膚や血液など、患者さん由来の組織からつくるiPS細胞を特に「疾患特異的iPS細胞」といいます。疾患特異的iPS細胞は患者さんの遺伝情報(病気を発症させる遺伝子も含む)を保有しているため、その病態を培養皿の中で再現することが可能となります。そのため、希少疾患や神経難病など疾患の原因遺伝子が明確ではあるが患者数の少ない疾患、病変部位が脳内などサンプル採取の困難な疾患、もしくは病気の発生や進行が全くわかっていない疾患に対して大きな力を発揮します。
中でも、神経難病のひとつである神経変性疾患は、何らかの要因から神経細胞が徐々に変性しその機能を失う病気で、神経細胞が新たに生まれてくることはほとんどないため、病気が進行しその機能を失う前に治療を行うことが重要になります。医療の進歩により病態初期の兆候をとらえる技術は発展しつつありますが、その精度はいまだ充分でなく、根本的な治療法開発にはもっと早い段階での病態検出が必須となります。疾患特異的iPS細胞では、生まれたばかりの神経細胞を作製すること、病態が進行する様子を観察することが可能となり、従来の技術と比較して早期の状態で病態マーカーの検出が可能となることが期待されています。iPS細胞のこのような性質を活用した病態マーカーの探索はすでに実施されており、疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明や新薬創出、新規治療法開発と組み合わせることで神経変性疾患の根本的な治療法開発が進められています。
また、疾患特異的iPS細胞の老化を意図的に促進させ、より早く病気の兆しを観察する方法も研究されており、個別化医療や先制医療(将来かかりそうな病気を予測して予防的な治療を行う)に対するiPS細胞技術の応用も期待されています。
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図:疾患特異的iPS細胞