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再生医療の基礎知識
イモリの再生
「トカゲのしっぽ切り」という言葉があるように、トカゲは危険を感じたり、敵から逃げる際に、自分のしっぽを切って逃げてしまいます。しっぽは切れてもまた生えてきます。
トカゲによく似たイモリは、しっぽはもちろん、足、あご、眼のレンズなどを失っても完全に再生することができます。
イモリの足を切断すると、周囲から表皮細胞が移動してきて1日足らずで切断面を覆います。表皮で覆われた傷口は、かさぶたや引き攣れなどの傷跡を起こさず滑らかな組織となります。そして、「再生芽」と呼ばれる未分化な細胞の塊を作ります。この再生芽にある未分化細胞は、皮膚の真皮の幹細胞(線維芽細胞)が脱分化したものです。この未分化細胞は、表皮や軟骨、腱などに再分化して、元と同じ組織を形づくるよう増殖します。
真皮の幹細胞がどのようにして脱分化するのかは完全に解明されていませんが、切断された末梢神経組織から分泌される数種のタンパク質の発現が四肢再生に関わることがわかってきました。
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図:イモリの脚の再生
また、イモリの眼からレンズ(水晶体)を取り除くと、全く別の組織である上方の虹彩色素上皮からレンズを再生します。虹彩色素上皮はメラニン色素を多く含み真っ黒な組織です。この真っ黒な細胞が脱分化し、透明なレンズの細胞を再生するのです。
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図:イモリの水晶体再生の過程
イモリは心臓も再生できます。イモリの心室を半分近く切除しても再生するという報告もあります。イモリの心臓にある心筋細胞が脱分化して増殖し、組織を再生している可能性があり、研究が進められています。
このようなイモリの再生は、種々の遺伝子の発現調節で行われています。 イモリの組織再生に関わる遺伝子を特定し、わたしたちヒトの遺伝子と比べることが、ヒトの組織の再生への足がかりとなるかもしれません。