- 再生医療の基礎知識
- ダイレクトリプログラミングとは?
再生医療の基礎知識
ダイレクトリプログラミングとは?
受精卵から個体が形成されていく過程は一方向性であり、一度分化した細胞は元の未分化な細胞には戻れない、あるいは他の系列の細胞にはならないと、長年にわたり信じられていました。(受精卵と細胞運命)
しかし最近の研究で細胞の特異的な分化の鍵となる転写因子群を導入することで、体細胞から、多能性幹細胞であるiPS細胞だけでなく、心筋、神経、肝細胞などのさまざまな分化細胞を直接誘導できることがわかってきました。 このように、体細胞から多能性幹細胞を経ずに特異的な分化細胞に直接誘導することは、「ダイレクトリプログラミング」と呼ばれており、基礎研究、創薬、さらには再生医療において、新たな潮流として研究開発が行われています。
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図:ダイレクトリプログラミング
線維芽細胞などからダイレクトリプログラミングにより
様々な細胞を誘導。
ダイレクトリプログラミングを、培養皿のなかではなく、生体内で行う再生医療技術も開発中です。例えば、生体内心筋リプログラミングという、心臓の中の非心筋細胞(線維芽細胞)を直接生体内で心筋に転換することで、心臓再生を目指した研究が国内外で進められています。生体内リプログラミングは、まだ基礎研究の段階にあり、実用化のためには多くの検討が必要でありますが、将来遺伝子治療の一大領域へと発展していく可能性が期待されています。
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図:心筋梗塞再生治療の可能性