- 再生医療の基礎知識
- 全身に幹細胞を持つプラナリア
再生医療の基礎知識
全身に幹細胞を持つプラナリア
プラナリアは、川などに生息する体長1~3cmほどの生き物です。三角形の頭に小さな目が2つ並んでついていて、平べったく細長い体をゆらしながら、水中をスーッと這うように移動する生物です。
プラナリアは、環境によって無性生殖と有性生殖とを切り替えて増殖します。無性生殖では、プラナリアは自身の体を2つに切って殖えます(自切)。自切したプラナリアは片方には頭が、もう片方にはしっぽがない状態です。ところが数日経つと、しっぽはもちろん脳や目などの組織を再生し、完全な2匹のプラナリアになります。プラナリアは未分化な幹細胞が全身に存在しており、体の位置情報に従い幹細胞の遺伝子を目的の組織に分化するよう操作して、失った体を正しく再生することができるのです。
プラナリアの再生は自切だけでなく、人工的に切断した時にも行われます。プラナリアを2つに切断すると完全な2匹のプラナリアに、3つに切断すると完全な3匹のプラナリアになります。こうしたプラナリアの再生の謎は、1900年ころから研究されていましたが、再生の決定的な要因はなかなか見つかりませんでした。100年以上たった現在、幹細胞からどのようにして器官や体を構築していくのか、体の極性や、位置情報を作るメカニズムを解き明かす研究が進められ、ついにプラナリアの再生の仕組みが解明されました。
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図:プラナリアの再生
失われた体の一部や機能不全となった組織や器官を再生し機能を回復する医療、すなわち再生医療の実現の糸口をつかむため、小さなプラナリアの研究は分子レベルと態様を変え、新たな意義を持ちつつあります。