再生医療と幹細胞
血液
図:造血幹細胞の分化
白血病は、血液細胞をつくる造血幹細胞ががんに変異したものです。
造血幹細胞とは、からだの骨髄や骨のすきまに存在し、自己複製能でクローンを生み出しつつ、種々の血液細胞に分化する細胞です。造血幹細胞ががん化すると血液内に異常な血液細胞が増加し、全身に様々な症状がでます。白血病は、かつては不治の病として恐れられていましたが、研究の進んだ現在ではかなりの確立で治癒することができるようになりました。
白血病はがん化した細胞の性質によりおおまかに4種類に分けられます。病型や症状に応じて治療法が異なりますが、化学療法を基本として、造血幹細胞移植療法を取り入れる治療法が中心となっています。造血幹細胞移植療法とは、正常な幹細胞とがん化した造血幹細胞を抗がん剤などの化学療法で一旦すべて死滅させた後、骨髄液や臍(さい)帯血などから取り出した正常な造血幹細胞を移植する治療法です。移植した造血幹細胞は新しい血液細胞をどんどんつくり、再び正常な状態に戻ることができます。
造血幹細胞移植療法は再生医療の先駆けとして日本では1970年代に始まりました。すでに医療の現場で相当数実施されているため、造血幹細胞移植は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」適用対象から外れており、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」が適用されています。
移植に用いられる正常な造血幹細胞は、ドナーから提供される①骨髄由来のもの(33%)、②末梢血由来のもの(21%)、③臍帯(へその緒)由来のもの(22%)と、自身の②末梢血由来のもの(31%)があります。1)
①骨髄由来
骨髄とは骨組織の空洞に入っている組織です。その中に多くの造血幹細胞が含まれています。骨髄移植とはドナーから採取した骨髄液を点滴で患者に注入する治療法です。
②末梢血由来
G-CSFというタンパク質を皮下注射すると、骨髄や骨のニッチで休眠していた造血幹細胞が血液中に放出されます。ドナーや患者にG-CSFを投与し血液分離装置を用いて血液を体外循環させ、造血幹細胞が含まれる末梢幹核細胞を採取します。体重50kgの人でだいたい7.5~10リットルの血液が処理され、大部分が返血されます。必要とされる細胞の造血幹細胞の数は1万個から2万個程度です。
③臍帯血由来
臍帯(へその緒)血は、分娩時の赤ちゃんのへその緒とお母さんの胎盤にある血液です。分娩後に採取するため、赤ちゃんやお母さんには負担がありません。無菌に近い状態で採取しなければならず、限られた施設でのみ採取が可能です。臍帯は胎児の老廃物を胎盤へ、酸素と栄養を胎盤から胎児へ運ぶ組織で、造血幹細胞が多く含まれています。しかしながら、成人白血病の治療には数が足らないことが多く小児白血病の治療に用いられます。
1) 一般社団法人日本造血細胞移植学会「平成24年度全国調査報告書」より