再生医療と幹細胞

軟骨

軟骨の役割

軟骨は少数の軟骨細胞とコラーゲンなどの気質に囲まれた組織で、曲げや圧力にも耐えることができます。軟骨は気質の成分により、硝子軟骨・線維軟骨・弾性軟骨の3種類に分類されます。硝子軟骨は、骨端部分を覆う関節や、気管、咽頭などに存在します。線維軟骨は、脊椎など動きの少ない関節に存在し、骨と骨の間でクッションの役割をしています。弾性軟骨は、耳などを形づくる軟骨です。
軟骨には血管、神経、リンパ管が存在しないため栄養や刺激が届きません。そのため軟骨細胞はほとんど増殖せず、軟骨が損傷すると治ることはほとんどありません。

軟骨疾患と再生医療

ケガや過度の負荷、加齢などで関節の軟骨が一度損傷してしまうと自然修復しないだけでなく、周囲の軟骨組織の変性・破壊が進み、軟骨の下の骨が硬くなったり、突起ができたりするなどし、変形性関節症へと進行してしまいます。そのため、できるだけ早期に関節軟骨を修復することが重要となります。従来関節軟骨を修復する外科的治療法として、骨髄刺激方法や骨軟骨柱移植術が行われてきました。また特に重篤な患者に対しては、人工関節への置換が行われますが、耐用年数が15~20年程度であるため、適応できる患者には限りがあります。

骨髄刺激方法

軟骨損傷部の下骨を削り出血させることで、骨髄中の間葉系細胞を損傷部に誘導して軟骨修復を図る方法です。この方法は簡便ですが、これにより再生される軟骨は線維軟骨で弾力性に富んだ本来の硝子軟骨ではないため、力学的に弱いという欠点があります。

骨軟骨柱移植術

大腿骨の非荷重部から骨軟骨柱を採取し、これを軟骨損傷部へ移植する方法です。本来の硝子軟骨で修復できる利点はありますが、欠損部が大きいと対応が難しくなります。また採取部に新たな軟骨障害を起こしてしまうという問題点があります。

開発動向・製品化動向

2012年、膝関節の軟骨損傷の治療を目的とした自家培養軟骨細胞製品が製造販売承認を取得し、翌年この製品に保険が適用されることになりました。本製品には厚生労働省より保険適用に関する留意事項が付与されています。定められた基準を満たし、準備が整った医療機関でのみ、治療が行われます。使用認定施設については、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングのHPでご確認ください。

自家培養軟骨の移植フロー(膝関節)
出典:株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

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