再生医療と幹細胞

循環器

図:洞房結節
図:心臓の構造
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心臓の動く仕組み

心臓は心筋という筋肉からできていて、4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれています。心筋は心筋細胞と呼ばれる細胞の集まりです。心筋細胞は自動性を持ち、たった1つの細胞でも休むことなく拍動し続けます。心臓にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という部分から一部の心筋細胞の集団に、規則正しくかつ協調性を持って収縮するよう命令が出されると、心筋細胞は互いにくっつきリズムを合わせて拍動します。その命令は隣へ、そのまた隣へと伝わって、4つの部屋を順序よく動かしていきます。こうして心臓は全体としてまとまった動きをして、血液を全身に循環させるポンプとして働いています。

心臓疾患について

「心不全」とは「病名」ではなく、種々の原因で心臓が十分に働かなくなり、全身に必要量の血液を送り出すことができなくなった状態を指します。血液の循環がうまく行かなくなるため、疲れやすい、顔・下肢がむくむ、食欲がなくなるなどの症状がおこります。また、肺に血液が滞り、息苦しさを感じることもあります。
心不全は重症になるほど治療が難しく、生命に関わる疾患の一つとなっています。末期的な心不全に対する治療法として心臓移植や人工心臓・補助心臓の装着がありますが、これらの治療をもってしても予後は依然として良好とはいえません。また心臓移植は、ドナー不足、適合性の問題などから治療を必要とする患者に対して十分に提供できておらず、人工心臓などについては感染症や装置の動作不良などいまだ多くの技術的な課題が残されているのが現状です。

心不全と再生医療

心筋細胞はほとんど増えないため何らかの原因で死んでしまうと細胞数はどんどん減少し、心機能もさらに低下します。「心不全」は心筋細胞の減少により発症するのです。
そこで、健常な心筋細胞を障害組織に対して移植することにより機能補填を試みようとする再生医療/細胞移植医療の研究が進められています。

細胞移植治療

移植に適正な細胞として、心臓に生着して病巣周辺の正常な心筋細胞の動きを助けたり、機能不全となった心筋に新しい心筋組織を再生することができる細胞が求められます。細胞移植後に拒絶反応が起こると死に至る恐れがあるため、自家細胞の使用が有用とされています。また、簡単で安価な培養方法の研究や、効果的な移植方法の開発も進められています。
これまでに世界各地で、骨格筋芽細胞、骨髄幹細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを細胞源として、心筋細胞などに分化誘導する研究が行われてきました。また、心臓に多く含まれる心臓線維芽細胞から直接心筋様細胞を作製する研究も進められています。

開発動向・製品化動向

現在日本では、「骨格筋芽細胞シート」による心筋再生医療の治験が始まっています。また、「骨髄単核球細胞」「脂肪組織由来間質細胞」「心臓幹細胞」を用いた臨床研究も行われています。

なお、韓国では、「自己骨髄間葉系幹細胞」を用いた急性心筋梗塞に対する治療薬「Hearticellgram®-AMI」が上市されています。

図:骨格筋芽細胞シート
図:骨格筋芽細胞シート
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