再生医療と幹細胞
幹細胞移植の特徴と現状iPS細胞移植について
iPS細胞も幹細胞ですが、iPS細胞を使用する移植は、従来の幹細胞移植と何が違うのです?
iPS細胞を移植する場合、まず移植する臓器や血液の細胞にiPS細胞を変化させる必要があります。よって、移植する細胞は、幹細胞性を失い分化した細胞であり、「iPS細胞由来の○×細胞」となります。造血幹細胞の場合は、既に血液の幹細胞なので特に細胞を変化させる必要がありませんが、適用できる疾患に限りがあります。その一方で、iPS細胞の場合、培養の条件や方法を変えることで様々な種類の細胞に変化させることができます。これにより、一種類のiPS細胞から多様な組織の細胞に分化させ、移植することが可能と考えられています。更に、iPS細胞より臓器を作製することができれば、iPS細胞を用いた移植治療の適応が広がることが考えられます。
また、患者さん自身のiPS細胞から、目的の細胞を作れば自家移植による治療ができ、拒絶反応も起こらないと考えられています。しかし、実際には莫大な費用と時間がかかり、すべての患者さんが適切な治療を受けられるとは限りません。そこで、日本人に多いHLA型のiPS細胞を作製し、ストックする計画が進められています。75名のiPS細胞で、日本人の80%のHLA型に対応するiPS細胞が供給できると計算されています。
患者さんにiPS細胞に由来する細胞を使用した移植の現状は?
2014年9月に「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」という臨床研究において、患者さん自身の皮膚より樹立されたiPS細胞に由来する網膜色素上皮を、網膜下へ移植する手術が行われました。iPS細胞由来の組織がヒトの体に移植されたのは、世界で初めてです。この臨床研究の情報は、滲出型加齢黄斑変性の臨床研究というホームページで公開されています。